林雄介のブログ!(はてな)

作家の林雄介。元農林水産省のキャリア官僚。政治評論家。

永野泰三の政。(=^▽^=)小泉龍太郎の決意。もし首相派生小説。林雄介著。

いつもありがとうございます。林雄介です。(=^▽^=)


小泉龍太郎が、衆議院議長の永野泰三とはじめてあったのは、小泉の父の葬儀の日だった。

築地本願寺で開かれた葬儀で、まだ、20代の小泉は、早すぎる父の死に呆然としていた。

葬儀が終わって、参列者が帰っていく中、日本自由党の元幹事長の永野泰三が、小泉に話しかけてきた。

永野の目は真っ赤だった。小泉の父をリーダーにする日本自由党第三派閥の事実上のドン、永野は小泉に言った「落ち着いたら、一度、事務所に来てくれんかな。」

小泉の死後、県会議員らが小泉の後継者をたてるつもりでいた。龍太郎も世襲には反対だったからそれでいいと思った。
東京大学、大蔵省、財務省主計次長、衆議院議員、父の人生は、父なりに意義があったと思う。

永野泰三の事務所を訪ねると、永野は小泉に行った。
「親父さんのあとを継ぐ気はあるかね。」
小泉は断言した。
「ありません。」
永野は満足そうな顔で一人頷いていた。「お父上に財務省を退官して、政治家に転身するようにすすめたのはワシでね。」

小泉「そうですか。父は父のできる範囲で悔いのない人生を送ったと思います。」

永野「君のお父上は、首相の器だった。もちろん、財務省に残れば事務次官になれた。しかし、事務次官で終わるにはおしい逸材だった。だから、ワシは引き抜いた。」

小泉「ご高配ありがとうございます。」
永野「お父上の後を継いで貰えんかね。」

小泉「私は自由人です。」

永野「しかし、蛙の子は蛙だ。」

小泉「県連は、後継者を新しく擁立すると聞いておりますが。」

永野「党本部で、仮に県連が決めても公認はおろさせんよ。」

小泉「世襲や密室政治の時代ではありません。身に余るお話ですが、私には荷が重すぎます。」

永野「君のお父上もそういって断ったな。」

小泉龍太郎は、永野泰三をじっと見つめると問いかけた。
「永野先生に、お伺いして宜しいでしょうか?」

永野「何かね」

小泉「父はなぜ、財務省を退官して、政治家の道を歩んだんでしょうか?」

永野「気になるかね?」

小泉は無言で頷いた。
永野「ワシにもわからん。ただ、事務次官を捨てて政治家になった以上、大きな決意があったことだけは間違いない。それを見つけるために、君は政治家になってみんかね。」

小泉「少し考える時間を頂けませんか?」

永野は頷いた。

小泉は永野の事務所をさると、自宅に戻った。財務省在職中も、政治家になってからも小泉はほとんど父と話したことがなかった。

城川れいなに相談したくなった。まだ、真夜中か。小泉は、アメリカに留学している城川にメールを書いた。

そういえば、父がニューヨークの日本総領事館に一等書記官として赴任していた時のことを思い出した。まだ、小泉が小学生の頃だ。
セントラルパークを散歩しながら父が小泉に言った。
「この国はいろんな人が暮らしているね。」

「いろんな人」。小泉は父の言葉が気になった。日本はEPA(経済連携協定)で、外国人労働者を受け入れた。それが、「日本人の雇用を奪う」と何回かの反対集会が日本各地で開かれた。まるで、「フランスの愛国戦線だね」と父は言った。

父の書斎は、まだ、そのままになっている。ふと、本棚の「高橋是清井上準之助、凶弾に倒れた2人の蔵相」という本が目についた。

何回も読み返した跡がある。本をペラペラめくると「経世済民」という父のメモがあった。本の端に小さく書かれている。
本の中には、父が読みながら書き付けたメモが何カ所かあった。高橋是清大蔵大臣、首相)は、軍縮で、井上準之助日銀総裁大蔵大臣)はもともと、緊縮財政派として軍部や右翼の恨みをかい暗殺された。
井上準之助が、一人一殺の血盟団に暗殺された箇所に父の文字で、「男子の本懐」と書かれていた。高橋是清はクーデター未遂事件ですでに暗殺されていた。
余談ながら、高橋是清が日銀副総裁時代に、ユダヤ・シンジゲートに多額の国債を引き受けさせ日露戦争の莫大な戦費を調達し、ロシアに日本が勝利したことは老臣達には有名であり、ユダヤ・シンジゲートによって日米開戦を回避しようという動きは太平洋戦争中も根強く残った。皮肉なことに、ユダヤ人脈のあった重臣、高橋是清の暗殺、松岡洋右三国同盟により日米開戦は回避不可能になっていった。「あと、10年、高橋是清が生きていれば、日米開戦は回避できたかもしれない。」

しかし、人には寿命がある。小泉は、父の死でそう悟った。
ふとパソコンを見ると城川れいなからの返信が届いていた。城川「迷っているなら、出馬したら?Good,Luck!れいな」

城川れいならしいなと小泉は思った。

小泉は、電話を取った。永野の自宅にかけると、書生が出た。小泉は、「まだ、永野先生は起きていらっしゃいますか?」と聞いた。
すぐに、永野が出た。
永野「答えはでたかね?」
小泉「はい」
永野「君のお父上もな、その日のうちに電話がかかってきた。じゃから、ワシは朝まで起きておるつもりじゃったよ。」
「年寄りは夜は苦手でな。」永野はそういうと電話をきった。

林雄介with,you。

「もしも国民が首相を選んだら」(マガジンランド社)

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